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大阪地方裁判所 平成5年(行ウ)64号 判決

原告

田中節子

田中清朝

法橋清代子

門林要子

右四名訴訟代理人弁護士

瀬戸康富

中武靖夫

被告

田中敏子

右訴訟代理人弁護士

坂和章平

被告

大阪法務局泉出張所登記官

吉田眞佐夫

右指定代理人

本田晃

(外三名)

主文

一  原告らの訴えをいずれも却下する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  原告ら(請求の趣旨)

1  被告らは原告らに対し、別紙図面一と別紙図面二記載のイ、ロ、ハ、ニの各点は同一地点であり、両図面は同一内容を示す図面であることを確認する。

2  被告大阪法務局泉出張所登記官(以下「登記官」という。)が原告らに対し、平成四年八月三日付でした、原告らの大阪法務局泉出張所平成四年五月二八日受付第八八七〇号代位による分筆登記申請を却下するとの処分を取り消す。

3  被告登記官は被告田中敏子(以下「田中」という。)に対し、別紙物件目録記載の土地につき分筆登記をせよ。

4  訴訟費用は被告らの負担とする。

二  被告ら

1  本案前の申立

主文同旨

2  請求の趣旨に対する答弁(被告登記官)

(一) 原告らの請求をいずれも棄却する。

(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  事案の概要

一  処分に至る経緯(当事者間に争いのない事実)

1  訴外亡田中楠春は被告田中に対し、和泉市内田町三六六番宅地99.17平方メートル(以下「三六六番の土地」という。)のうち、別紙物件目録記載の土地(一筆の土地の一部、以下「本件土地」という。)につき、持分二分の一の所有権一部移転登記手続を命ずる確定判決を得た。

2  亡田中楠春が死亡し、原告らが同人を相続したので、原告らは、平成四年五月二八日、被告登記官に対し、右判決正本を代位原因証書とし、別紙図面二を地積測量図として添付して代位による本件土地の分筆登記を申請した。

3  これに対して、被告登記官は、同年八月三日、右申請書には隣接する水路の明示書(いわゆる官民境界確定書)の添付がなく、大阪府鳳土木事務所に現地立会を求めたが文書により出席できない旨の回答があるなどしたため、周囲の境界が確認できないとの理由で、右申請書に掲げた事項が実地調査の結果と符合しないとして不動産登記法(以下「法」という。)四九条一〇号の規定により右申請を却下した(右却下処分を以下「本件処分」という。)。

二  原告らの主張

1  一筆の土地の一部について所有権移転登記を命ずる確定判決を得た場合、登記権利者は右確定判決を代位原因を証する書面として代位による分筆登記の申請をすることができるが(法四六条ノ二)、その際申請書に添付する地積測量図(法八一条ノ二第二項、法施行細則(以下「細則」という。)四二条ノ四)と右確定判決に添付された図面が内容的に同一であることが確認されれば、登記義務者の関与なしに分筆登記が得られることとなる。

したがって、本件において、確定判決の添付図面である別紙図面一と原告らが右分筆登記の申請書に地積測量図として添付した別紙図面二が同一内容を示す図面であることを被告らと原告らとの間で確認できれば、右代位による分筆登記を登記義務者である被告田中の関与なしに得られ、原告らの法律上の地位及び財産権が保護されることになる。

よって、原告らは被告らに対し、請求の趣旨1のとおりの確認を求める。

2  分筆登記を申請するためには、当該土地が国有地に隣接するからといって国有財産法上の境界確定の手続を経ることを要しないことは判例の認めるところである(大阪高等裁判所平成二年七月二五日判決、最高裁判所平成四年三月二六日第一小法廷判決)。しかるに、被告登記官は、不要な官民境界の確定を求め、これを経ていないとの理由で原告らの申請を却下したものであるから、本件処分は違法である。

よって、原告らは、本件処分の取消しを求めるとともに、被告登記官に対し被告田中に対して、原告らの申請とおりの分筆登記をすることを求める。

三  被告田中の本案前の申立ての理由

原告らの被告田中に対する訴え(請求の趣旨1の訴え)は、一定の権利関係の存否の確認を求めるものではないから、確認の利益を欠く。

四  被告登記官の主張

1  本案前の申立ての理由

(一) 請求の趣旨1について

右訴えは、事実の確認を求めるものであるが、民事訴訟において確認の対象となるのは現在の法律関係でなければならず、単なる事実の確認を求める訴えは、民訴法二二五条に定める場合を除き不適法である。

原告らは別紙図面一と別紙図面二が同一内容を示す図面であることを被告らと原告らとの間で確認できれば、代位による分筆登記をすることができるはずであるから確認の利益が存すると主張するが、仮に、右各図面が同一内容を示すものであるとしても、後記2(一)のとおり、三六六番の土地と水路、里道との間の境界を確認できなければ分筆登記をすることができないのであるから、右主張にも理由はない。

(二) 同2について

被告登記官は、平成四年八月三日に本件処分をなしたものであるところ、本件訴えが提起されたのは平成五年一〇月二五日であるから、右訴えは行訴法一四条三項に定める出訴期間を徒過し不適法である。

(三) 同3について

右訴えは、被告登記官に対して一定の作為を命ずるいわゆる義務付け訴訟であるが、法令上特段の定めのある場合のほかは、裁判所は行政庁に代わって自ら処分をしたのと同様の効果を生ずる判決をしたり、行政庁に処分を命じたりなどすることはできないから、義務付け訴訟は現行法上許容されるものではない。

仮に、義務付け訴訟が次の要件すなわち、(1)行政庁が当該処分をなすべきこと又はなすべからざることが法律上覊束されており、行政庁に自由裁量の余地が全く残されていないため第一次的な判断権を行政庁に留保することが必ずしも重要でないと認められ、(2)事前的な司法審査を認めないことによる損害が大きく、事前の救済の必要が顕著であり、他に適切な救済方法がない、という各要件が満たされる場合に限りこの種の訴訟が許されるとの見解に立つとしても、本件において右の要件をなんら充足していないことは明らかである。

したがって、右訴えは不適法である。

2  本案に対する主張

(一) 不動産の表示に関する登記は、権利の客体である不動産の客観的、物理的な形状、位置及び範囲を正確に把握して登記簿に反映させることによって取引の安全を図ろうとするものであり、その要請から法五〇条一項は登記官に実地調査権を与えている。

したがって、分筆登記申請がなされた場合、登記官はその権限に基づき実地調査を実施するか否かの判断をした上、実地調査の必要がある場合は所有者その他の利害関係人にその旨を通知して立会い等の協力を求め、申請書に掲げられた土地の表示に関する事項が現況と合致するか否かの調査確認を行い、当該登記申請の処理(受理か却下)に当たることになるのである。

確定判決を代位原因証書として代位により登記権利者が分筆登記の申請をする場合も、右に述べたところと同様であり、申請書には分筆後の地積測量図を添付しなければならず(法八一条ノ二第二項)、右地積測量図に記載された境界が、登記所に既に存在する図面等によって認められる境界と合致しているような場合や隣地所有者等の立会い証明書が添付されているような場合はともかく、当該土地の境界が明らかではない場合には、登記官は実地調査権を行使し、関係者の立会いを求めて境界を確認しなければならないのである。

(二) 本件の場合、被告登記官は申請書に隣接地との境界の確認を証する書面の添付がなかったことから、実地調査が必要であると判断し、平成四年六月二四日に申請代理人であった三浦土地家屋調査士の立会のうえで実地調査を実施した。

右実施調査の結果、公図上三六六番の土地に隣接している水路は一部宅地化され、水路との境界も不明となっており、また境界を示す境界標識は見当たらず、三六六番の土地の特定ができない状況にあり、さらに三六六番の土地と水路・里道との境界について、水路・里道を管理する大阪府知事(窓口となったのは、知事から公共用地と民有地との境界確定に関する権限を委任された大阪府鳳土木事務所長)に立会いを拒否され、境界を確認することができなかったものである。

(三) したがって、三六六番の土地の位置が特定できなかったのであるから、申請書に掲げた事項が実地調査の結果と符合しないとして法四九条一〇号により申請を却下した被告登記官の処分は適法である。

五  被告登記官の主張に対する原告の反論

1  四1(二)の主張(出訴期間徒過の主張)に対して

登記官の処分に対する審査請求には期間の制限がない(法一五七条ノ二は行政不服審査法一四条の適用を除外している。)。そして、行訴法八条は、「処分の取消しの訴えは、当該処分につき審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。」と規定しているから、審査請求に期間の制限がない場合には、取消訴訟は出訴期間の制限を受けないと解するべきである。

2  四2の主張(本案に対する主張)に対して

被告は三六六番の土地と水路、里道との間に官民境界の確定がなされていないことを理由に分筆登記の申請を却下したが、大阪府鳳土木事務所長は、右土地の登記名義人あるいは共有者全員の申請でなければ官民境界の確定に応じないとの立場をとっているから、被告田中が官民境界の確定に協力しない以上、官民境界の確定を行うことは原告らには不可能である。このような場合にまで、代位による分筆登記の申請にあたり官民境界の確定が必要とすると、勝訴判決を得ても権利の実現ができない結果となり不当である。

第三  当裁判所の判断

一  請求の趣旨1の訴えについて

右訴えは、別紙図面一及び別紙図面二記載の各イ、ロ、ハ、ニの各点が同一地点であり、両図面は同一内容を示す図面であるという単なる事実の確認を求める訴えであるところ、確認の訴えの対象となるのは現在の権利又は法律関係でなければならず、単なる事実の確認は民訴法二二五条に定める例外を除き確認の利益を欠くから、右訴えは不適法というべきである。

なお、原告らは、右各図面が同一内容を示すことが原告らと被告らの間で確認されれば、直ちに分筆登記をなし得るから確認の利益があると主張するが、たとえ右各図面が同一内容であっても直ちに分筆登記がなされるわけではないことは後記三2に述べるとおりであるから、右主張には理由がない。

二  請求の趣旨3の訴えについて

右訴えは被告登記官に対して原告らの申請とおりの分筆登記をせよとの一定の作為を求めるいわゆる義務付け訴訟であるが、このような訴訟は、行政に関する行政庁の第一次的判断権を侵害するものであって原則的には不適法というべきであり、例外的に、申請に応じた処分をなすべき行政庁の作為義務の存在が一義的に明白であり、事前の司法審査によらなければ当事者の権利救済が得られず回復し難い損害を及ぼすという緊急の必要性があり、かつ他に適切な救済方法がないと認められる場合に限って許されるというべきである。

しかるに、本件においては、原告らは本件処分の取消訴訟で勝訴すれば、右判決の拘束力(行訴法三三条二項)によって判決の趣旨に従った処分がなされることとなって、所期の目的を達することができるのであるから、他に適切な救済方法がないとはいえないというべきである。したがって、右訴えは不適法である。

三  請求の趣旨2の訴えについて

1  出訴期間について

前記のとおり被告登記官が本件処分をなしたのは平成四年八月三日である。そしてその後間もなく原告らが右処分があったことを知ったことは弁論の全趣旨により明らかであり、さらに本件訴えが平成五年一〇月二五日に提起されたことは当裁判所に顕著である。

したがって、右訴えは、行訴法一四条一項及び三項の出訴期間を徒過した後に提起されたものであるから不適法というべきである。

原告は、法一五七条ノ二が行政不服審査法一四条の適用を排除しており、登記官の処分に対する審査請求については期間の制限がないから、処分の取消訴訟についてもいつでも提起することができると主張する。

たしかに、法一五七条ノ二は行政不服審査法一四条の適用を排除しているから、登記官の処分はいつまででも審査請求をもって争えることとなるが、反面、法は行訴法一四条の適用を排除していないから、登記官の処分であるからといって、出訴期間の制限がないと解するのも相当ではない。

すなわち、右行政不服審査法の規定の適用を排除した法一五七条ノ二の立法趣旨が審査請求に期間を設けないことにより審査請求を通じて登記簿の記載をできるだけ実体関係に符合させ正確に公示させようとしたことは明らかであるが、反面同条が行訴法一四条に定める出訴期間の制限に関する規定の適用を排除していないことを考えると、登記官の処分につき、訴えを提起して裁判所の判断を受けるためには、右出訴期間内に審査請求をするかあるいは直接裁判所に訴えを提起しなければならないものと解すべきである。

そして、本件の場合、甲七号証及び弁論の全趣旨によれば、本件訴え提起時において原告らは本件処分に対する審査請求を行っておらず、本件訴え提起後平成六年に入ってから審査請求を行ったことが認められるから、原告らが出訴期間内に審査請求を行っていないことは明らかであり、したがって行訴法一四条四項の適用の余地はなく、前述のとおり本件訴えは出訴期間を徒過した後に提起されたもので不適法というべきである。

2  なお、念のために本案について判断する。

(一) 不動産の表示に関する登記は、権利の客体たる不動産の客観的現況を公示することにより取引の安全を図ろうとするものであるから、不動産の物理的現況の正確な把握とその公示は登記官の職責であるとされ、表示に関する登記の申請があった場合、登記官は表示に関する事項について実地調査権を与えられている(法五〇条)。

そして、表示に関する登記の申請書に掲げた表示に関する事項が登記官の調査の結果と符合しないときは、登記官は右登記の申請を却下しなければならないのである(法四九条一〇号)。

土地の分筆の登記とは、一筆の土地を分割して数筆の土地とする登記であるから、その前提として、一筆の土地が存在し、しかもその範囲が正確に把握されていること(つまり分筆元地とされる土地の区画が隣接地を包含していたり、一筆の土地の一部分であってはならない。)及び分割される土地が一筆の土地の範囲内に存在していることが必要とされるのであり、したがって、分筆登記にあたっては、原則として分筆元地と隣接地との境界が明らかでなければならないと解される(もっとも、分筆される土地以外の土地(分筆残地)と隣接地との境界につき紛争が存する場合において、分筆される土地が右紛争地と無関係である場合には、便宜上分筆が許される場合があるが、右は例外的かつ便宜的な取扱いである。)。

そのため、分筆登記の申請をする際には、方位、地番、隣地の地番及び求積の方法等を記載して分割前の土地を図示し、分割線を明らかにした地積測量図を添付することとされており(法八一条ノ二第二項、細則四二条ノ四第一項、不動産登記事務取扱手続準則(以下「準則」という。)一二三条)、登記官は、分筆登記の申請がなされた場合、登記申請書及び添付の地積測量図等と分筆元地の登記簿や登記所の保管する地図や地図に準ずる図面等を照合審査して分筆元地の範囲が明らかであるかを検討し、必要がある場合には、実地調査を行い、当該土地の境界の確認や地積の検測等を行うこととなる。そして、境界が確認できないときは、申請書に掲げられた土地の表示に関する事項が登記官のなした調査と符合しないとして、登記官は右登記の申請を却下しなければならないのである。

ところで、一筆の土地の一部について登記義務者に対し、所有権移転登記手続を命ずる判決が確定した場合、登記権利者は右所有権移転登記請求権を保全するために、当該判決正本を代位原因証書として、登記義務者の分筆登記申請手続を代位行使することができるが(民法四二三条、法四六条ノ二)、右代位による分筆登記は、登記権利者の名において登記義務者が行うべき登記を申請し得るものであるものの、その他の点については登記申請に関する通則に従うべきものであるから、登記官において分筆元地の範囲ないし隣接地との境界の確認を要するという点においても通常の分筆登記の申請と異なるところはない。

(二) 本件の場合、原告らは一筆の土地(三六六番の土地)の一部(本件土地)について所有権(共有持分二分の一)移転登記手続を命ずる確定判決を得たうえで、右確定判決を代位原因証書として代位による分筆登記を申請したものであるところ、本件土地の範囲について右確定判決は別紙図面一によりこれを示しており、原告らは右申請書に細則四二条ノ四第一項、準則一二三条によって要求される地積測量図として別紙図面二を添付した。

そして、甲七号証及び弁論の全趣旨によれば、三六六番の土地(ほぼ長方形の形状の土地)は、公図上三辺を水路ないし里道に接し、他の一辺については同所三六五番の土地(民有地)に接する土地であり、原告が分筆を求める本件土地は三方を水路ないし里道に接していることが認められる。

したがって、三六六番の土地ないし本件土地の位置、範囲を知るためには、右水路、里道との境界が明らかでなければならないところ、別紙図面一、二から明らかなように、別紙図面二には三六六番一の土地と隣接地との境界点とされる点のすべてについて境界標の記載や筆界点と近傍の恒久的地物との距離、角度等の位置関係の記載がなく、また別紙図面一についても分筆線とされるイ、ロ点について境界石らしきものの表示があるものの、隣接する水路ないし里道との境界点であるハ、ニ点についてはその位置関係を知り得る適確な記載はなんら存在しない。また、原告らの申請書には右水路、里道の財産管理者である大阪府知事から公共用地の境界確定に関する権限を委任された大阪府鳳土木事務所長との間で境界確定の協議を経たことを示す書面等の添付もなかったのであるから、結局、被告登記官には、本件の分筆登記申請書及びその添付図面や登記所が保管する書面等からは、三六六番の土地ないし本件土地と水路、里道との間の境界を知ることはできなかったものと推認される。

そこで、被告登記官は実地調査を実施したのであるが、甲七号証及び弁論の全趣旨によれば、平成四年六月二四日、佐々木秀策登記官及び川口喜代治登記官が、本件分筆登記申請代理人である三浦土地家屋調査士の立会いのもとに実地調査を行ったところ、公図上三六六番の土地に隣接している水路は一部宅地化されて水路との境界も不明となっており、境界を示す境界標も見当たらず、また大阪府鳳土木事務所長は立会いを拒否したので、結局三六六番の土地と水路との境界を確認することができなかったことが認められる。

このように境界を確認することができない以上、実地調査の結果、申請にかかる土地の位置を特定することができなかったこととなるから、当該分筆登記の申請は、申請書に掲げられた土地の表示に関する事項が登記官の調査の結果と符合しないとして、法四九条一〇号に基づき却下するほかなく、被告登記官の処分は適法というべきである。

これに対して、原告は、分筆登記を申請する際には、当該土地が国有地に隣接するからといって国有財産法上の境界確定の手続を経ることを要しないと主張する。しかし、分筆登記の申請の際に、国有財産法上の境界確定の手続を経ていることを法が要請するところではないことは原告の主張するとおりであるとしても(原告が引用する大阪高等裁判所の判決(甲四号証の一)もこの理を述べているに過ぎない。)、そのような申請がなされた場合には、登記官は原則として担当者等の立会いを求めた上で実地調査を行うことになり、実地調査を行っても境界が確認できない場合には、前記のとおり申請は却下されることとなるのである。

また原告らは、財産管理者が境界確定協議に応じない場合には分筆登記ができないとすれば、勝訴判決を得ても原告らの権利の実現ができないと主張する。

しかし、被告登記官において実地調査を行っても三六六番の土地ないし本件土地と水路との境界が確認できない以上、分筆登記をすることができないことは、不動産の表示に関する登記について実質的調査権を有し、不動産の現況を明確に公示することを職責とする登記官として当然の取扱いであり、原告の確定判決の執行(登記の移転)ができないからといって右職責を放棄すべき理由とすることはできない。

四  以上のとおり、原告らの本件各訴えはいずれも不適法であるからこれをいずれも却下することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官下村浩藏 裁判官小野憲一 裁判官植村京子)

別紙〈省略〉

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